ボカシ肥のつくり方使い方

多様な微生物が根の回りにいると、土壌病害が出づらくなったり、作物の養分吸収が安定化しやすかったりすると考えられていますが、根圏にどのような微生物が住みつくかは、土壌の微生物層によっても変わってきます。
よく「堆肥やボカシ肥を施肥することで、微生物が多様化し、病気が驚くほど少なくなる!!」といったような、簡便であることをやたらに主張した、コンテンツ飛び付かせ系のフレーズを目にすることがありますが、前述のように、それは土壌の生命状態によっても大きく結果が変わってくるものだと思いますので、そんなに簡単な話ではないでしょう。
「○○を食べれば人は健康になれる」みたいなものと一緒で、「巷で良いと考えられている微生物資材を投入すれば必ず環境が良くなる」というような乱暴な考えで土壌を単純に解釈し、コントロールしようとすることは、人と土壌のより良い関係性や健康を考えるうえでも、あまり効果的ではないように思います。
「米ぬかっていいんですよね?」とか「植物性堆肥っていいんですよね?」みたいなことを聞かれることがたまにありますが、大切なことはそういうことではないのだろうと思っています。
僕が就農する時に鬼読みした、「ボカシ肥のつくり方使い方」の中にも、堆肥やボカシ肥のような資材を対症療法的に考えない方がよいというようなことが書かれていて、僕はその考え方に結構影響を受けています。
下記引用文
(ボカシ肥は悪い畑をすぐによくするものではなく、よい畑を悪化させず、よい状態をそのまま長く維持する施肥法だと考えることです。
化学性、物理性、生物性にわたって土を総合的に守り、維持していく優れた施肥法であり、対症療法的な手段ではないのです。)
有機農業がめざすものの一つに、「肥沃な土壌を維持する」という考え方があると思いますが、それを上記引用文に当てはめて考えるのであれば、身近な資源で作られた、ボカシ肥や土コウジみたいなものを農業的に利用することは、有機農業という視点から見て、環境的な利点も高いと考えられそうです。
ただ、これに関しても「どんな材料をどのタイミングでどんな土壌に使うか」とか「どんな発酵のさせ方をするか」によっても結果が大きく変わってくるでしょうし、場合によっては悪影響があることも十分に考えられるでしょうから、「ボカシ肥でさえあれば、畑を悪化させず、良い状態を必ずキープできるものだ」と考え過ぎないようにしたいです。