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有機、オーガニックって何??②





本記事は、前々回の記事「有機、オーガニックって何??」Blogの続編になります。



前の章では、有機という言葉の発祥について書いた所で記事を終えましたが、今回は、「有機やオーガニックという概念が、何を生み出してくれるものなのか??」 という部分の自己整理を改めて行い、「その言葉が使われ出してから現代までの歴史の中で、その解釈がどのように変遷していったのか??」を考えていきたいと思います。


まずは、前回の記事内の「有機の語源」の所で紹介した、日本有機農業研究会発足の所から、現在までの大きな流れをざっくりと確認していきます。(記事トップの図)


2006年の有機農業推進法までの主な出来事と、有機農業に対する社会イメージの変遷の図になります。(イメージは私見です)



前の章でも書いた通り、有機やオーガニックという概念がまだ浸透していないうちの有機農業は、科学的な偏見により、ナンセンスなものとして位置付けられていたことも多かったであろうことを考えると、20世紀後半の数十年で、かなりガラリと社会のイメージが変わったように僕の中では見えていますが、僕はこの時代のムーブメントの空気を直接肌で受けていませんので、当時から運動なさっていた方々のイメージとは、ずいぶん違う感じで見えているのだろうと思っています。


ですので、このイメージはあくまで一個人の解釈に過ぎず、これがファクトではないということを前提にご覧いただければ幸いです。

酷評を受けながらも、少しづつ確実に市民権を獲得し、多くの方々に認知されるようになり、その注目度は今もなお上昇し続けているという時代の流れを見ていると、繰り返しになりますが、実際に自分が今現在、有機農業を楽しめているのも、ムーブメントを起こしてきた先人の皆様のお陰さまなのだろうと強く思います。




2006年〜現在



次に2006年以降もざっくりと



紹介したい出来事はまだまだ山のようにありますが、僕が今回の記事で書きたい大きなテーマは、


「有機農業の歴史から、人々や社会の「有機」という概念に対する解釈や期待値などの変遷を追った上で、結局、今の社会に共有されるべき最も重要なポイントやイメージって一体なんなんだろうか??を考え、なるべく掴みやすい形にしたい」


ということですので、あまり複雑になりすぎないように、ピックアップする出来事自体をかなり絞らせてもらいました。


2005年以降は、有機農業の定義や原則などの基準が制定され、また、生産、加工、表示などの国際ガイドラインなども定められるなど、今までの有機農業運動により作られてきた理念を実現させるための手段がより具体的になっていき、情報伝達や共有もしやすくなったことから、理念のイメージが今までよりも随分と掴みやすくなったのではないかと思います。

それに伴い、そのガイドラインにそった政策や活動、ソーシャルビジネスなどもどんどん生まれてきていることは、最近のことになりますので皆さんもよくご存知のことかと思います。

そうした流れの影響がどこまであるのかは分かりませんが、「オーガニックとは??」と、新たに興味を抱く層がどんどん増えてきているのは間違いないことのように思っています。

それは、この記事を書くきっかけにもなっている、「ここ数年、興味を持ち始めた、という人によく出会う」という実際の肌感覚からもそう思います。




定義、原則



「2006年〜現在」の図中に書いてある、「IFOAMが定めた国際的な有機農業の定義、原則」を下記に紹介します。 現在、有機、オーガニックという概念が世界的にどのような方角を向いているのかを確認していきたいと思います。



●定義






有機農業は、土壌、自然生態系、人々の健康を持続させる農業生産システムである。
それは、地域の自然生態系の営み、生物多様性と循環に根ざすものであり、これに悪影響を及ぼす投入物の使用を避けて行われる。

有機農業は、伝統と革新と科学を結びつけ、自然循環と共生してその恵みを分かち合い、そして、関係する全ての生物と人間の間に公正な関係を築くと共に生命、生活の質を高める。





●原則




 

「健康」「生態的」「公正」「配慮」


※これらの原理は全てが1つのものとして用いられるべきであり、これらは行動を喚起する為の論理的な原理として構成されている。



以上が、シンプルに示された国際的な有機農業の定義&原則 になりますが、これを見ると、有機、オーガニックって、「ただ単に化学物質を使わなければよい」というだけのものではないということがよく分かります。

特に「公正」な取引や、環境や次世代へつないでいくための「配慮」などは、初期の有機農業運動の時は、今ほどにはなかったであろう概念だと思いますが、これらの概念は、発祥当初の理念やムーブメントが軸となり、人々の行動や心理などの因子が時の流れと共に社会に合わせて変化していき、それらが初期の理念と複雑に絡み合った結果が生みだした、現代の人々にとってのベターなのだろうと思います。

発祥の時の理念と、上記の定義や原則を見比べてみると、時代と共に有機やオーガニックの捉え方や捉えるポイントが変化していることがうかがえるかと思います。


その後、IFOAMが2017年に「オーガニック3.0」と題し、次なる段階に進みはじめました。

その新しい呼びかけには、




「真に持続可能な農業の実戦がもたらす社会や経済面での便益は、現在のあらゆる問題を削減し、難題に挑む手段になりうる。持続可能とは、次世代がそのニーズを満たせる条件を危機に晒さずに、現在のニーズを満たすこと、天然資源の枯渇や破壊を避けることで生態系のバランスを保全することである」



というようなことが書かれています。


つまり、「農業の実践方法を持続可能なものにしていこう」という所を運動の中枢におこうということですね。



一気に現代っぽい解釈になりました。

今までの定義や原則にもしっかり沿い、人間の社会性や経済性もしっかり意識し、今の社会の課題に取り組もうという気概がうかがえます。





「持続可能とは、人間のニーズを危機に晒さないことと、資源の枯渇を防ぐことが大切」。というようなことが書いてありますが、資源の問題は、今も昔も山積みであり続けている(いた)ことは間違いのない事実ですので、次の章では、その辺りのことを書こうと思います。

資源のことは、有機やオーガニックの本質的な理念の部分を捉える上でもとても大切なことだと思いますしね。





本章のおわりに