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生活必需品の価格高騰と野菜の卸売価額の推移から考える、歪なインフレ構造。



最近、野菜が高くて大変という嘆きの声を聞く機会が結構あります。


しかしその一方で、農家側の声では卸売り値が伸び悩んでいて困るという声もよく聞きます。


同じ価格に対する嘆きの声でも、生産と消費の立場で向いている方向が違うことはよくあるものです。


写真は、主な野菜の卸売値の推移を示したグラフになりますが、(農林水産省、青果物卸売市場調査結果より)実際の所、確かに卸値は下がり基調です。


グラフは令和3年までのものですが、令和5年の直近データを見ても特別上がっているということもありません。


昨年の玉ねぎのように、一時的に物凄い高騰を記録した時もありますが、現時点で、大方の作物が5年平均値あたりで推移しています。


つまり、野菜の売値が伸び悩んでいることに困っている農家は、決して僕の周りの話だけではないということがグラフからも理解できます。


野菜は生産量が需給量を明らかに上回っているので、相対的に過剰生産の状態になっていることは間違いないでしょうから、どちらにせよ、高く買ってもらうことがそもそも難しい商材だとは思いますが、資源価格高騰により生産コストが上がっているのにも関わらず、それに見合った価格で販売できていないということがこの課題の根本的な原因なのだろうと思います。



先日、卸売り市場や小売りと距離の近い農家の皆さんとこのことをお話しする機会があったのですが、その中の一人が、「農家は買ってもらえなくなることを恐れて価格転嫁がほとんどできておらず、小売りも原料やエネルギーの価格高騰の荒波を越えるために、” 経費をいかに抑え、適切な範囲で価格を上乗せできるか “ というバランスをとることに必至である」というようなことをおっしゃっていましたが、実際に全体的にそういう傾向にあるのだとしたら、先に述べたような差が生まれてしまうのは極自然なことなのかもしれません。


これは農業だけに限らず、おそらく多くの分野で似たようなことが起きているのだろうなと思っています。



総務省調べの最新の消費者物価指数(令和5年1月分、2020年基準)を見てみると、財とサービスの伸び率に大きな差があります。


前年同期比で、財が7.1%、サービスが08% の伸び率になっています。


財に分類されているものは、エネルギー、インフラ、農水畜産物など、輸入物価の影響を受けやすいものがほとんどですから、物価指数の伸び率が高いのはよく理解できますが、サービスの伸び率との差をみてしまうと、そのアンバランスさが際立ちます。


サービスは、人件費との関連性が深いものが多いと思いますので、財に比べてこの水準が大幅に低いということは、生活必需品の価格の上昇幅に対し、給料が上昇していない人も多いと思いますし、また、価格にうまく転嫁できていない業種も多いのであろうということが想像できます。


コストプッシュ型が強すぎて、ディマンドプル型が弱すぎるという、歪なバランスのインフレになっていることにあまりよいことはなさそうだと思いますので、なんとかならないものかと思うことも多いですが、残念ながら、僕にはその構造をどうにかできる力も知恵もありません。


ただ、人はできることや役割がそれぞれ違いますし、国際情勢の変化など、何をどうしても調整不能なものもありますから、そこに悲観感情もありません。


僕は、自分の農園が時代の荒波に翻弄されて消えてしまうようことがないように力を尽くすのみです。



今回、価格高騰の裏側で、取引価格が上がらずに困っていたり、価格転嫁できない立場の人も多いであろうということを紹介してきました。


それは、前述したように、農業という分野の話だけではないことから、消費に関わる人全体で考えるに値するテーマの一つであると考えます。


近年、繰り返し登場する、「価格高騰」や「物価上昇で家計に大打撃」みたいなパワーワードの訴求力で、なんでもかんでも値段が上がっているというイメージを持っている人も少なくないと思います。


こういうパワーワードが世の関心をひくためのネタの範囲に止まっているうちはまだ笑える話ですが、それが行きすぎた勘違いを生み出し、他者の立場を尊重することを忘れさせてしまうような因子になるのであれば、そんなものはただの社会のノイズにしかならないのだろうと僕は考えます。



必ずしも綺麗にまとまらないかもしれないし、全然良くならないかもしれないけれど、それでも、それぞれが他者の立場を尊重し合い、生産と消費のバランスのより良い形を考え、理解しようとすることは、生産と消費により豊かさが担保されているような現代の人間社会で生きていく以上、とても大切なことだと思うからです。

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