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踏み込み温床と夏野菜の育苗から考える持続可能性。



2021年、今年も落ち葉を踏み込み、夏野菜育苗用の温床を仕込みました。


※踏み込み温床とは??

(寒い時期から夏野菜の苗作りができるよう、有機物を積み上げ、そこから生まれる発酵熱を利用して、夏野菜の生育に適した環境(20~30度程度)を作ってあげる、という昔ながらの農業技術。)



この有機物温床には、色々な作り方や人それぞれのこだわりがあるので、積み上げる材料も人によって違いますが、うちは基本的に「落ち葉と米糠を積み上げる」というシンプルなスタイルをとっています。


「温度を高くあげる為に」と言って、鶏糞、牛糞、などの材料を混ぜたり、「水分調整の必要が少なくてすむから」と言って、おからを混ぜたりする方もいますが、僕はなるべく少ない材料で完結したいということと、うちの地域(温暖地)と作付けスケジュールであれば、落ち葉と米糠だけの発熱力でも何ら問題がありませんのでそうしています。



「落ち葉を積んで、米糠をふって、水をかけ、踏み込み、その上にまた落ち葉を積んで米糠をふって水をかけて踏む…」という作業を、5~7回繰り返し、うちの場合は大体50㎝くらいの高さまで積み上げています。



仕込んだ後、大体2~3日くらいで急激に温度が上がり、50~60度になりますが、1週間くらいすると30度くらいに落ち着いてきますので、その辺りの温度帯まで落ち着いたことを確認してから夏野菜の種まきを始めます。






また、うちはビニールハウスを使っていないので、温床の上にビニールトンネルを2重張りして、雨よけと保温&蓄熱をしています。






この踏み温床を見て「なぜ、夏野菜の種まきをするのにそんなことをしなければならないのか??」という質問をよく受けますので、その理由を簡単に説明しますね。



■今の時期に普通に種まきをしても夏野菜は発芽しないので、人工的に最適な温度環境を作ってあげないといけない。


■温かくなれば普通に播いても発芽しますが、温かくなってから播くと収穫始めがずいぶん遅くなってしまう。

(5月にもなれば、もう直播きでも大丈夫ですが、直播きするとなすやピーマンやトマトなどは発芽が遅いので初期の管理が大変)


■うちの場合は、周年で野菜の詰め合わせを作る為の栽培計画が主なので、6月くらいから夏野菜を採り始めるスケジュールで作付けることが前提となっていますが、セット野菜売りでなければおそらくこの時期には仕込みません。


つまり、6月くらいから夏野菜を採り始めたいから、寒い時期から温床で育苗するということですね。






うちはそのような方法をとっていますが、電気の力を借りて温床を作る人もいます

(下記リンクの電熱マットとか)


正直、手っ取り早く温度管理をするのであれば、電熱マットを使った方がはるかに楽です。





「それでも何故うちは落ち葉温床を採用するのか??」という理由については、


■電気ではなく、その場にある有機物をエネルギー源にできる(エネルギーの地産地消)


■副産物が出る(分解された落ち葉が、次の年に使う育苗用土になる)



という2点に尽きます。



もちろん、落ち葉を集めるのが手間、とか、温度管理のコントロールがしづらい などのデメリットもありはしますが、そんなものは大した問題にならない程、僕にとっての有機物温床は利点の方が遥かに多いものなのです。



何より、「低エネルギー、低依存物で成り立つ農業」という我が家の農業のテーマにぴったりの方法ですし、地域資源で多くのことが完結できるに越したことはないと思いますしね。



そのような地産地消的な小規模有機農業のアプローチ法って、自分にはとても魅力的に映りますし、それを自身の生活の中に取り入れられていることにとても満足してはいますが、世界の環境問題的な視点でみた時に「本当にそれは良いことなのかな??」ということを時々考えさせられることがあります。



例えば、マットリドレー著書「繁栄」の中に書いてある、「集約農業は自然を救う」というような視点で農業と自然環境問題のことを見ている人も沢山いると思いますし、そのような視点で考えると、僕が良かれと思ってやっている方法も、自然に優しくないことになってしまう可能性もある訳です。






文中では、


「世界中の作物を全て合計すると、2005年の単位面積当たりの生産量は1968年の2倍になっていて、集約化により生産するために必要な土地が大分節約されている」というようなことが書かれています。

集約化により収穫高が増えていなければ、増え続ける人口を支えるために、もっと多くの雨林を焼き払い、砂漠に灌漑を施し、沼地を干拓し、干潟を埋め立て、牧草地を耕すことになっていたであろうとのことです。


また、今日の人々が耕している土地は、地球の陸地の38%にすぎないが、もしこれが1960年代の収穫高のままであれば、今日の人口に食糧を供給するためには陸地の82%を耕作しなくてはならないとも書かれています。



上記のようなことも含めて環境のことを見ていくと、人口を支えるための農業、人間も含めた持続可能性を考えた時に、農産物の生産スピードもそうですが、単位面積辺りの収量が低くなりがちな有機農業は、人間社会にも環境にもあまり優しくないかも??という風に考えることもできます。


僕自身はここであげる集約化とは極対照的な農業の方法をとってはいますが、このマットリドレー的な集約&ミニマム化の考え方に対し、そこまで否定的な考えを持っていません。


どちらかというと理解できる方です。


それは、むしろそういう超集約型の農業が発展することによって、僕の理想とするような低エネルギーミニマム農生活に今とは違った価値が出たり、娯楽のような感覚で、僕のような農生活がそこかしこで今以上に取り入れられるようになる可能性もあるかもしれないなと思うからです。



欲をいえば、4%ミルイニシアチブ のような考え方に沿いながら、有機物をあっちこっちに移動させることを大前提とせず、農家それぞれが近くの資源だけで畑に炭素をうまく補充し、更には集約農業レベルにまで生産力を上げることができればそれが一番良いのだろうと思いますが、現実問題、増え続ける人を支えながら、環境インパクトを減らすということを考えると、やっぱりリドレー的な視点を農業の軸におきながら、農産物の生産は大きな集約農業に任せて、それ以外の所で、超自然派リアル農生活みたいなものがゲームをするような感覚で多くの人が楽しめる社会の方がバランスは良いのかもしれないなと考えています。



もちろん、その中で、その超自然派がどこまで生産力を伸ばせるかの追求をやめないことは大前提で。


※4%ミルイニシアチブとは??






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