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野菜のアミノ酸の利用について考える(後編)


アミノ酸についてのBlog、後編です。

前編では、

・「そもそもアミノ酸って何?」 

・「必須アミノ酸と非必須アミノ酸の存在について」

・「人と植物は使えるアミノ酸が違う」


という、3つのことについて簡単に書きました。


今日は、前回紹介した基礎を踏まえた上で、「アミノ酸の種類によって植物の生育に与える影響」について追っていきたいと思います。

それでは、本日もどうぞよろしくお願いいたします。


■アミノ酸ごとの生育に与える影響


上図は、福島県農業総合センター 二瓶直登 先生の 「植物のアミノ酸吸収について」の論文からの引用データになります。

異なるアミノ酸を含む培地で イネ、コムギ、大豆、チンゲンサイ、きゅうり を栽培するという試験の結果です。

無機態窒素区の窒素含有量を100として、アミノ酸培地別の植物体中の窒素含有量を示したものが一覧できるようになっています。

この研究の大きなテーマは「植物はアミノ酸を窒素源として生育することができるのか??」であろうと解釈していますが、個人的にとても興味深い研究テーマです。

左3列、無機態窒素無し区(無N)、無機態窒素区(NO₃⁻(硝酸ナトリウム) NH₄⁺(硫酸アンモニア))は基準値で、そこから右側のAla〜Valまでの20成分は、前回確認してきた主要アミノ酸20種になります。


表の見方としては、例えばグルタミン(Gln)では、全ての植物が、無機態窒素区よりも窒素含有量が促進していることが確認できます。

キュウリなどは、ほとんどのアミノ酸区で無機態窒素区よりも生育が劣っていて、大豆などは、どのアミノ酸区でも生育の差がほとんど見られない。といった感じになります。

大豆がどんな場所でも育てやすいというメカニズムのヒントがここにあるような気がしてます。

この研究結果に関しては、論文内でも色々な考察がなされておりましたが、反応の要因自体の解明には至っておらず、アミノ酸の吸収特性の解明は、今現在も大きな研究課題として残されているようです。

■有機質肥料圃場は、化学肥料のみの圃場よりも、アミノ酸が多く存在する??

以前、「植物は有機態窒素も利用している」 というテーマで、Peonやそのメカニズムについての複雑性についての記事を書きましたが、(冬作と有機態窒素) 今回のアミノ酸の話も同じようなもので、無機化した窒素量(有機質肥料が分解して吸収可能な栄養になったもの)だけでは、生育の説明ができない現象や事例が数多く存在しているという事実があるようです。

「なぜ窒素がないのに生育できるのか??」という、説明のできない事例に対し、「畑中に存在する数々のアミノ酸を直接吸収していることにより起こっている現象である」というような可能性を示唆する見解もあったりしますが、個人的に受ける印象としては、その現象の解明には、まだまだ沢山の課題が残されているように感じています。




二瓶先生の論文には、「有機質肥料圃場は、化学肥料のみの圃場よりも、アミノ酸が多く存在するという報告もある」 ということも書いてありましたが、もしそれが普遍的事実であるのであれば、有機農業への未知なるポジティブな可能性に対しての想像がますます膨らみ、個人的にはとても喜ばしい気持ちになります。


とはいえ、僕は、「有機質肥料を使うとことは絶対的に良いかもね」みたいなことをここで言いたいわけではなく、「より良い農業技術としての有機質肥料の効果的利用法に個人的に興味があり、有機質肥料が無機態窒素になる過程で生まれるタンパク質やアミノ酸の利用メカニズムを理解することは、有機農業そのものの深い理解につながるであろう」 と考えているので、この手の分野に対しての学びを深めたいという欲求があり、学んだことに対しての頭の整理も兼ねて本記事を書いています。


それは、いつも言っているように、力を注ぎたいと思える、僕にとって魅力的に映ることだからです。


また、自分が面白いと思う参考例を集めて記事化することは、俯瞰的かつ、システマチックに物事を考えていくために、僕の中ではとても重要なことですので。



■植物にダイレクトに吸収させることによって、植物が体力を消耗しない。


炭水化物を消耗しないと旨味が増すという考察のことを紹介した、先日の記事(おいしい野菜はどうやってできる??)の話と一緒で、アミノ酸を直接吸収できることによる、植物生育上での利点にも似たような所がありますので、ご紹介したいと思います。

下記、株式会社ジャパンバイオファーム代表取締役会長 小祝政明 先生の考察です。


通常、植物体内で合成するアミノ酸の原料は、光合成によってつくられた炭水化物と根から吸収した無機態チッソである。これに対しアミノ酸が根から吸収されれば、植物体内でのアミノ酸合成を省略できるため、無機態チッソに比べて合成に関わるエネルギーの消費が少ないため生育に有利である。このことが、しばしばいわれる化学肥料で育てた作物より有機栽培作物が旺盛に育つという原因の一つではないかと考えられている。



僕はこの考え方にとても惹かれておりますし、有機態窒素や無機化される前のアミノ酸をうまく利用できるサイクルが体系化できたら、どんなに嬉しいことかと思います。

それでは、一体どうやってアミノ酸を効かせるのか?? ということに対して、小祝先生が「ボカシ肥料の材料でアミノ酸資材を作る方法」を解説していた記事が現代農業にありましたので、その一文も紹介いたします。



■ボカシの作り方で、栄養生長型アミノ酸と生殖生長型アミノ酸


 それでは、実際にアミノ酸資材を作る場合、どのようにして栄養生長型と生殖生長型で作り分ければよいのだろうか? たとえば、ボカシ肥作りの場合、まず、米ヌカに糖類と種菌などを加えて(水分を調製して)一次発酵、さらに植物性または動物性の有機質を加えて二次発酵を行なうことが多い。「このうち、二次発酵のときに、原料・環境・微生物を変えることで作り分けられる」と小祝さんはいう。

 原料に魚カスや肉カスなど相対的にチッソ分の高いものを多く加え、酸素呼吸が活発でアルギニンなどを作るのが得意な納豆菌を加え、通気のよい好気的な環境で二酸化炭素の形で炭水化物を逃がしてやれば、栄養生長型のアミノ酸が多く含まれるボカシ肥になる。
 逆に、原料に大豆カスなど相対的に炭水化物の多いものを加え、酸素呼吸にあまり頼らずにプロリンなどを作るのが得意な酵母を加え、高水分もしくは密閉に近い嫌気的な環境で炭水化物を閉じ込めてやれば、生殖生長型のアミノ酸が多く含まれるボカシ肥になる。

 ただし、食味の向上には炭水化物の多い生殖生長型がいいと単純に考えてはならない。チッソ分の高い原料にはイオウ分も多く含まれており、チッソは旨味に、イオウは香味に関係している。たとえば、イオウ分は大豆カスや玄米でイワシ類の二分の一、オカラで四分の一である。魚由来の原材料を発酵させることで、香りや旨みを増す。

 さらに、「二次発酵でアミノ酸を十分に作り込むには一次発酵が決定的」という。納豆菌も酵母もタンパク質やデンプン・繊維など高分子のものを分解するには糖分が必要。そのため、一次発酵でこうじ菌を働かせて高分子の炭水化物を低分子化し、納豆菌や酵母が働くのに十分な糖類を作っておかなければならない。土着のこうじ菌を捕まえる場合は酢飯で取り込むといいらしい。