何でもない虫

虫が性交しています。
多分オオゴミムシかな。
こういう瞬間に出くわすと、思わず仕事の手を止めてしばらく観察してしまいます。
種別問わず、生命繁殖の儀式には、言語では言い表せないような神秘性があります。
この虫は、野菜にとっては害でも益でもない「何でもない虫」と考えられているようですが、このような虫も、生態系上では何かしらの役割を担っている訳ですし、僕の場合、畑の環境を一緒に作っていく仕事仲間だと認識しています。
人間にとっての刹那的な善悪感情や損得感情は置いておいて、虫や草や菌、多種多様な生き物がいることで成り立っている、生命社会全体の繊細で複雑なシステムに対し、できるだけ深く思いを巡らせようと努め、謙虚に向き合おうとする姿勢を持つということは、僕が畑仕事をする上で最も大切にしたいことです。
「そんなものは農業上ではきれいごとである」みたいなことを言われてしまうこともありますが、別に善意でやっているものでもありませんから、それを他者にどう受け止められても一向に構わないと思っています。
いいなと思うものは、どの角度から見てもやっぱりいいなと思うし、自分のいいなと思う感情はいつまでも大切にしていたいのです。
人間の可聴域を超える音もデジタル化したハイレゾに対し、「可聴域外の音域をわざわざ収めることに意味はあるのか??」みたいな議論があったりしますが、20,000Hz以上の領域を感じられることが良い音として認識する上でかかせないものだと考える人にとってみれば、そんなものはもはやどうでもよい議論だったりもする訳です。
それと似たようなもので、僕は僕の思う畑仕事上に存在する倍音やハイパーソニックエフェクトのような領域を存分に味わい尽くしたいと思っています。