砂塵と生物の関係を考える

少し前、NASA Earth Observatory で、アフリカのサハラ砂漠から舞い上がり、西に向かう大量の砂塵の画像が紹介されていました。
僕はそもそも砂塵にあまり良いイメージを持っていませんでしたが、「どうやらそんな単純な話でもなさそうだ」ということをリンクの記事から考えさせられていて、今日はそのことを簡単に書こうと思います。
記事には、「サハラ地域で発生する冬や春の嵐で発生する砂塵は、大西洋をこえてアマゾンの熱帯雨林に運ばれ、夏の季節風時の砂塵は、アフリカからカリブ海、メキシコ湾まで運ばれる」というようなことが書かれています。
また、「砂塵は植物や植物プランクトンが必要とする鉄分やミネラルに富んでおり、海洋生態系や陸地の植物に養分を提供するという役割もある」というような、生物にとって極めてポジティブな側面も紹介されています。
日本でも黄砂がありますので、僕と同じように砂塵自体に良いイメージを持っていない人も多いのでは??と思っていますが、(そんなことなかったらすいません)上記で示されているように、捉え方によっては、砂塵の働きが、地球環境や生物生態系にとって好影響をもたらすケースも多そうだということがうかがえます。
興味深かったので少し砂塵のことを調べてみると、土の研究者、藤井一至さんの著書で、世界の砂塵が環境に与える影響のことが書かれていました。
その中で、黄砂のことにも触れられていて、「黄砂は、窓ガラスや洗濯物を汚す一方で、太平洋への旅によりプランクトンの栄養となり、マグロを育むことにもつながる」というようなことが書かれております。
また、「北欧で削られた土砂が風に乗って、東欧のウクライナ、ロシア南西部あたりに堆積し、北米ではプレーリー地帯に砂塵が堆積し、それらが草原由来の腐植と混ざりあい、世界有数の肥沃な黒土(チェルノーゼム)が発達した」とも書かれています。
ロシア、ウクライナで相当量の小麦を世界中に供給しているということは、最近の騒動で多くの人が理解できているのではないかと思いますが、それらの資源を生み出す土が育まれるまでの歴史背景にも砂塵が影響している可能性があるということを考えると、本当に地球活動ってやつはダイナミックだな~と思います。
今回、お伝えしたかったことをまとめると、「一見、人にとってやっかいな部分も多いであろう砂塵も、回り回って、人の社会の恵みの一端を担っている可能性がとても高い」ということです。
大気中に舞い上がった砂塵を「地表に届く太陽エネルギーの量を変化させたり、人体に影響を与えたりもするもの」というようなことだけで考えてしまうと、問題だと捉えることにしか思考が及びませんが、視点を変えて見ると、むしろ豊かさの方が多いのかもしれないということです。
レビット博士の「ドリルを買う人が欲しいのは「穴」である」ではありませんが、私たちの生きている社会が本質的に何を望んでいるのかを広い視点で考えることはとても重要なように思いましたし、そこに関わってくる自然現象の一つ一つを短絡的に見過ぎないということを考えていきたいとも改めて思いました。
というお話しでした。