青枯病の生活史と対策あれこれ




今日は青枯病のことを書きます。

今回のテーマを選んだきっかけは、近年、青枯病菌の勢力増大の気配を感じる所がポツポツとあり、夏野菜の管理が本格化する前に青枯れ病対策の復習、整理をしておこうと思ったからです。


ご存知でない方もいらっしゃるかもしれませんので、青枯病のことを簡単に説明すると、トマトやナスやピーマンのナス科類野菜をはじめ、その他にも多くの植物を侵す、ラルストニア・ソラナケアラムという細菌がもたらす病気になりますが、元気だったお野菜が急激に枯れてしまったりすることから、野菜栽培をする上で、できれば避けて通りたい病気の一つです。

そんな青枯病の病原菌の生活史を見てみると




■青枯病菌は土壌中で腐生的に存在し,植物が栽培されると根の傷や自然開口部から感染,根の皮層や導管を通じて茎へ移行し,導管内で増殖,水分通導機能を低下させ萎凋症状を引き起こす。

■地上部の萎れ症状がみられるころには,根部から病原菌が土壌中に排出されて圃場の病原菌密度を高め,被害植物の残渣とともに次作の伝染源となる。

■冬季の低温や乾燥などで作土層(地表~20cm前後の深さ)の青枯病菌密度は低下するが,硬盤層以下の深層部では安定的に生存する。


(農文協データベース、トマト青枯病 より)




というような書かれ方をしています。

この生活史を見て、2つ思うことがあります。


まず一つ目は、

以前、畝の半分近く青枯病が発生してしまった場所に被害株残渣を浅くすき込んで、翌年にも同じ作物を連作したという年があったのですが、結果、嘘のように被害が全然気にならなかったこともあるので、例え残渣が残っていても環境によっては影響がないこともあるのではないかと考えています。


そのようなことから、「被害植物の残渣とともに次作の伝染源となる」というのは、必ずしも恐怖材料にはなるという訳ではない、と思っています。


(何が影響して回避できたのかは全然分からないですし、違う場所で同じようにやったら案の定大発生してしまった畝もありますので、避けられるのであれば避けた方が無難なのでしょうけれど)

次に2つ目、

うちの場合、発生する時は生育後半が圧倒的に多いので、深層部で侵されているケースが多いように思いますが、硬盤層のほぼないであろう当園の畑は、根を深くまで伸ばせることが多いような気もするので、深層で菌が安定的に生存していたとしたら、「菌が巣食っている所に限っては、かえって硬盤がないことが問題になる可能性もあるのかな?」ということも考えらます。


そのようなことから、発生地では、「畝を浅耕気味で深層との境を締め気味にして、通路の排水をしっかり目にできる構造にした方が良いのかも??」などとも思いました。


■半不耕起で防ぐ


上記のようなことをあれこれ考えながらデータベース内サーフィンをしていると、「2つ目の考察(浅耕気味で~のやつ)はそこまでずれていないのかもしれない」と思えるような興味深い記事に出会いましたので、少しここで紹介したいと思います。

記事の内容は、「水田土壌で半不耕起畝で取り組んだら、劇的に青枯れ被害が減った」というものです。

話の要点をまとめると、

■定植前に深耕すると、土壌の深くにいた青枯菌が土壌全層に広がってしまう。

■細かく深く耕すことにより、地温と水分量が激変しやすく、環境影響を受けやすいことから、根がダメージを受けやすい。

というポイントを問題視したことをきっかけに、極浅く耕す半不耕起畝に転換した所、青枯病の発生量が劇的に減ったということでしたが、先ほど僕のイメージしていたものにとても近い環境を作っておられて、作物の根を畝上に浅めに張らせ、通路で排水するような構造をイメージして耕作地をデザインされていました。



また、とても興味深い感想を述べられていたのですが(以下)、僕の個人的な体験知からの感情ととても近しいものを感じ、読みながら思わず、「おお~っ、すげー分かる!!」と声に出してしまいました(笑)




個々の病気対策はやめた


 結果論になりますが、私はことさら青枯病の対策に力を注いで問題を解決してきた、ということはありません。青枯病のほかにも、冬作ストックの菌核病、ハクサイの芯腐れ病など、致命傷になりかねない怖い病気は多々ありますが、私はそれら個々の病気について深く追究することをいつの間にかやめてしまっています。年間何十品目も野菜をつくる直売所農家ならおわかりでしょうが、「この作物のあの害虫への薬剤は何が効く? 登録は? この病気にはどんな対策がある?」という各個撃破の対症療法をあれこれ調べてみても結局埒《らち》が明かなくなったのです。
 不耕起で堆肥も元肥もなし、必要なとき必要なだけ単肥で追肥、滅多なことでは防除は行なわない、雑草は適当に生やしておく。結果、ここ数年病気はほとんど発生しなくなりました。年中つくりまわす様々な作物とその作物の周囲に同居する虫やら菌類やら雑草やら、みんなひっくるめた圃場の環境が健全で丸く収まっているのならば、人があれこれ手を出す必要はないのではないか? そんな畑でこそ低コストで生産性の高い農業が可能なのではないか、と最近私は思うのです。(三重県松阪市)



現代農業 20127月号 「青枯病も半耕起で防げる」より引用。 (執筆 青木恒男さん)  



僕自身も青枯病に限らず、就農当初と比べて病気はかなり少なくなったと思っていますが、不耕起的なアプローチをしていたからこそいただけた恩恵も少なからずあるのではないかと考えています。


もちろん、品種の選別などによっても結果が大きく変化している部分もあるとは思いますが、その経験から受けた肌感から、青木さんと同じように、「虫やら菌やら草やらも含めて環境は健全化されるのではないか??」という考えや問いが生まれていることは間違いありません。

ただ、一つ大切なのは、先ほどの青枯病の連作実験の結果のように、どんな圃場でも上手くいくというわけではなく、同じようなことをやり続けていても、いつまでも病原菌が優勢気味な圃場もあったりしますので、上記のような感情や問いに対し「まだ確かなことの方が少なく、もしかしたらそういう傾向にあるのではないか?? そうあったらよいな」というようなふんわりした感情を覚えております。


つまり、経験や今まで得てきた知識から発生している、個人的な考察や理想に過ぎないので、必ずしも良いものであるかのようには言い切ることができないということですね。



■青枯病の対策


少し話が飛んでしまいましたが、最後に、青枯病の現在の主流の対策、新研究のことを簡単に。

現在の一般的な対策としては、接ぎ木栽培やクロルピクリンなどの土壌消毒、ふすまや米糠を利用した土壌還元消毒、太陽熱消毒などが行われていますが、土壌深層部での発病を防除することが難しかったり、近年の温暖化の影響もあり、既存の防除方法で回避できない場面が出てきているという報告も多方からあると言われています。



個人的には、既存の防除方法で回避できなくなったという部分の理由について、温暖化の影響だけでなく、もっと複雑な理由があるのではないかと思っていますが、温暖化が大きな要因となっていると考察されている見解も多いように感じています。



上記の対策法とは別に、アミノ酸の1種であるヒスチジンが病害抵抗性を高めることができるということが、最近の新技術として注目を集めているようです。

この技術は病原菌を直接殺さずに植物のもともと持っている病害抵抗性を高める物質を利用して病原菌を抑制する技術のようで、薬剤耐性菌が理論上必要ないと言われていることからも注目されているようです。

まだその有効性を明らかにするためには、実証実験の積み重ねが必要という段階のようですが、環境保全型病害対策としても期待が高まっているようです。

また、その他の対策としては、イネ化などの非宿主を中心に輪作を行ったり、なるべく乾燥気味に作るなどの耕種的な防除方法もあります。





一つの病気を追うだけでも物凄い情報量に調べれば調べるほど圧倒されますが、僕はあらゆる物事を色々な角度から見たいという欲求があるので、調べ事は本当に楽しい時間だなと思っています。




​Post List