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ネギの土寄せの歴史




春らしい陽気が続き、春採りネギの葉も活発に動き出しはじめています。



冬越しネギの多くの品種は、3月に入ると花を咲かせる準備に入りますが、春採り用の品種は花の咲くスイッチが入るのが遅いので、5月くらいまで収穫を楽しむことができます。




「花が咲いてしまうと収穫できないの??」


という方もいらっしゃると思いますので簡単に説明すると、花を咲かせてしまうと、タネを残そうとすることにエネルギーを使いだし始めるので、可食部である葉がどんどん硬くなってしまい、食用には適さなくなってしまいます。




ちなみにネギは白い部分も葉になります。

※白い部分は茎と認識している人も多いですが、茎は根っこから数㎝の極短い部分のことをいいます。




さて、今日の記事は、ネギの白い部分を伸ばすために行われる土寄せについての記事です。





ネギの土寄せとは、「ネギの葉の下部を土で覆い、日に当たらないようにすることによって、葉の部分を軟白化させながら伸ばしていく」という栽培技術になります。



先日、ふと「ネギってなんで土寄せして育てるようになったんだろう?」と気になって、その歴史を調べてみた所、「6世紀の中国、魏晋南北朝時代の北魏の斉民要術(華北の農業・牧畜・衣食住技術に関する総合的農書)に、ネギの土寄せのやり方が示されていた」という情報を見つけました。



「なぜそうしようと思ったのか??」については残念ながら分かりませんでしたが、随分前から寄せていたという記録はあるようですね。





また、その他にも色々と調べていると、ネギには数々の興味深い歴史があって、その中でも最もインパクトが強かったのが、



「貝原益軒(江戸時代の健康生活フロントランナー)の大和本草(当時の日本史上最高峰の生物学&農学書)に、「ネギを死者の鼻や耳に入れると甦る」と記載されていた。」



という歴史情報です。



古代、神事や祭事に神に捧げる野菜とされていたり、魔除けに使われていたりしたという話は聞いたことがありましたが、ネギにそんなハードな呪術的側面があったことは知りませんでした。



生物の歴史って本当に面白いです。




少し話が脱線してしまいましたが、話を土寄せのことに戻します。


うちは栽培スタイル的に土をあまり動かしたくないと思っていますので、例えネギであっても、土寄せはしない、もしくは最小限にするように心がけています。



ですので、我が家のネギは基本的に短いネギばかりなのですが、僕はそれをあまりネガティブなものとして捉えていません。



なぜなら、僕は「土寄せをせず、あえて短いネギを育てることのメリットも多いのでは??」という考えを持っているからです。


また、「そういう方向に(短いネギが好まれる)、栽培や消費のトレンドも傾きつつあるのではないか??」と思うような時もあったりしますし。



このことについての説明は少し長くなりそうな気がしますので、具体的なうちのネギの栽培方法も含めて、また機会を改めて詳しく書こうと思います。





※文中で紹介した貝原益軒の有名な代表作「養生訓」は今の時代にも通ずる作品だと思います。


江戸時代のベストセラーが教えてくれる健康長寿の心得が、現代を生きる我々の胸をも打つような核心をついていて、人の本質は、今も昔も大きく変わらないのだろうということを感じさせてくれます。



以下、養生訓より引用。


“養生の術は、まず心法をよく慎んで守らなければ行われないものだ。心を静かにして落ちつけ、怒りをおさえて欲を少なくし、いつも楽しんで心配をしない。これが養生の術であって、心を守る道でもある。心法を守らなければ養生の術は行われないものだ。それゆえに、心を養い身体を養う工夫は別なことではなく、一つの術である” “心を平静にして徳を養う 心を平静にし、気をなごやかにし、言葉を少なくして静をたもつことは、徳を養うとともに身体を養うことにもなる。その方法は同じなのである。口数多くお喋べりであること、心が動揺し気が荒くなることは、徳をそこない、身体をそこなう。その害をなす点では同様なのである”








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■人の力と少しの道具で成り立つ、シンプル&ミニマムな農業をモットーに、農園を営んでおります。

当Blogの主な内容は、「久保寺農園の少量多品目野菜栽培記」や「生業としての不耕起、浅耕起型農業の実践記 & その栽培方法と考え方」になります。
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