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有機農地の世界シェア





最近、「有機農業の世界シェアってどのくらいなんだろう??」と思い、FiBL(スイス有機農業研究所)の最新データを見てみました。


上図の通り、世界農地総面積における有機農業占有率は、世界全体で約1.5%程度になるようです。(日本国内だけの占有率は0.2%程度)


現時点の最新データでの総面積値は、約7230万ha(2019年)になりますが、面積の推移データを見てみると、1999年1100万ha、2015年5000万haという感じになっていますので、世界的に見ても、ここ数年で確実に有機農地が増えているということがうかがえます。(下図参照)





また、取り組む人(生産者数)も10年前から比べると50%以上の伸び率を記録しているようです。

(細かい数字は発見できませんでしたが、世界全体で少なく見積もっても280万はいると報告されているみたいです。)


有機農地の全体量が増え続けていて、世界的に注目が集まっていることは間違いないことではある一方で、まだまだそのシェアは極低ですし、農業全体で見れば労働生産性も極めて低く、その他にも課題が山盛りの分野であることも間違いないでしょう。


しかし、それと同時に、とてつもない伸び代があるということも間違いなさそうな気がしています。



土地の使用方法別の最新データも非常に興味深く、69%は牧草地としての利用、穀物や豆、油種などの一年生作物は18%足らずで、果樹などの永年性作物が7%程度という感じになっています。(下図参照)






上記シェア分布から、有機野菜や有機穀物の希少性の高さと、そのスペシャル感が実は物凄いことに気がつかされます。



ただ、最近は、倫理面や家畜の健康面、工場畜産に対しての否定的な意見もあり、グラスフェッド(放牧を前提とした牧草飼育)のようなオーガニックスタイルに注目している生産者も多いのではないかと思いますので、そういったことを考えると、穀物や果樹や野菜の占有率が低くなってしまうことは当然のことなのかもしれませんね。


(放牧農業における、必要牧草地は物凄い面積になることから(1頭の牛を育てるのに 1ha/年 必要だとか))


実際、データ上でも、グラスフェッド畜産が盛んなオセアニアの占有面積が圧倒的に高いですしね。(下図参照)







日本だけのシェアを見ると(JAS取得農地のみ)、田27%、普通畑47%、樹園地15% 牧草地9% その他2%(H29年)というようなデータが示されていますが、世界シェアに比べると牧草地が圧倒的に少ないですね。(下図参照)


日本に住んでいての肌感もあるのでしょうか、このシェア分布の数字はなんとなくイメージしていたものに近いです。



もし日本の牧草地シェアが高かったら物凄く不自然でしょうしね。


日本国内でも、放牧にメリットを感じている人やグラスフェッド畜産のようなものに注目している人も多いのではないかと思いますが、日本の場合は国土が小さく山ばかりということから、まとまった農地を確保するのも難しそうですし…。


(日本の放牧個数全畜産農家経営内シェアは、乳用で15%、肉用で9%のようです(H28年))








■終わりに

上記で述べたように、世界全体のオーガニック農地の総面積は完全に右肩上がりですし、その伸び率だけを見れば、1999年比較で555%も伸びています。


しかし、農業全体で比較すれば極小ですし、普及にはまだまだ程遠いのだろうと思います。

また、解決しなければならない問題や課題は山積みでしょうから、簡単に分布が一気に拡大することはないだろうと思います。




この度、色々とデータを見て率直に感じたことは、「有機農業って、自分の思っていた以上に小さい産業だ」ということです。


自分の周りには有機農家も結構多いですし、自分のタイムラインにはオーガニック情報が頻繁に流れてきますので、正直、もう少しトレンド化していると思っていました。


環境的な視点でみても、現代との相性もよいとも思っていましたしね。



しかし、冷静に考えてみれば、効率よく生産性を高めていくための栽培方法でないことは明らかなので、全体シェアが低いことの方が自然なのだろうと思います。


また、農薬や化学肥料を使わずに効率よくそれなりに生産量を上げるとなると、「現状、牧草地や穀物くらいにしか適応できない方法」という見方もできますので、全有機農地のシェアがほぼ牧草地と穀物で占められているということもよく理解できます。



オーガニックそのものの考え方もそうですが、グラスフェッドやアニマルウェルフェアやヘルスコンシャスなど、表面的に「おっ、それいいじゃん」みたいなことだったとしても、その普及を考えていくと、必ず現実的な問題が次から次へと出てくるものです。


それはオーガニックに限らず、新しい技術や取り組みなど、変化を必要とするあらゆるアクションに当てはまるものだろうと思います。


最後に、個人的な考えを述べさせてもらうと、僕は今の所、世界の食糧供給を有機農業だけでできるとは思えないですし、有機農業が増えることによって生まれる課題も沢山あるだろうと思っています。


だからといって有機農業に意義がないとは思いませんし、環境貢献性の追求、生物多様性と土壌肥沃度を高めていくための必要性などから農業問題を考えていった時に、その一つのスタイルとして有機農業には注目されるべき点が多いように思いますので、必ず出てくるであろうデメリットも並行して考えていった先に、「圧倒的なメリットの存在に、社会全体(自分も含め)がその価値に気が付かざるを得ない」というような感じになってくると良いなと思っています。




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■人の力と少しの道具で成り立つ、シンプル&ミニマムな農業をモットーに、農園を営んでおります。

当Blogの主な内容は、「久保寺農園の少量多品目野菜栽培記」や「生業としての不耕起、浅耕起型農業の実践記 & その栽培方法と考え方」になります。
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