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硝酸態窒素の健康被害、環境影響を考える





毎年、1月は余裕時間が結構ありますので、インプットの時間を多めに取るようにしています。



今日はそのインプット月間中に出会った1冊の本のご紹介と雑感Blogになります。(記事トップ写真の「硝酸塩は本当に危険か」という本になります。)


この本は「硝酸塩の危険性」について、自分が悶々としていた部分に対して丁寧に解説してくれていて、目から鱗が落ちたような気持ちになりました。


僕は仕事柄「窒素肥料の過剰施肥による影響から、食品中の硝酸態窒素が人類の健康を害する」とか「水質などの環境汚染につながる」という考えを持っている方に結構出会うことがありますが、そのような方たちの話を聞くたびに、「その問題って、長く語られている割に、あまりにも健康被害の実例が少なすぎるから全然ピンとこないし、それって本当なの?? できれば最近の症例や具体的なデータなどを教えてほしいんだけど」と思っていました。


それと、根拠がそこまで提示できないにも関わらず「硝酸態窒素=健康にとって悪いもの」みたいになっているような論調の方がいたりする所も結構気になっていたりしました。



それって、そんなに恐れる必要があるのかな??本当に健康を害するのかな??と…



この本は、そんな僕のモヤモヤを吹き飛ばしてくれるかのように「硝酸塩はむしろ人の健康にとっての有益な側面がある」という新しい考えを有益なデータや実症例と共に提示してくれていて、僕の硝酸塩に対しての向き合うべき方向性を示してくれたと同時に、視野を少し広げてくれました。


ただ、だからと言って「硝酸塩は全く問題のないものだ」というような楽観的な思考になれた訳ではなく、マクロで見れば気になったポイントもいくつかあります。


その中で特に気になったことは、人間の健康以外の影響のことについてです。


本中に書かれているように、人の健康にそこまで影響がないものだということが確実なものだったとしても、過剰施肥による環境的な問題はまた別の話だと思いますので、どちらにせよ、人の行動が硝酸態窒素を過剰に生み出す原因にならないように努めていく意味はあるのだろうと考えます。

そのようなことから、人間の健康に影響はなくとも減らせるなら減らせるに越したことのないものなのだろうと思いました。


例えば、土壌キャパシティを超えるような量の肥料を人がドカスカ入れることの環境ダメージは計りしれない程の大きさだと思いますし、これからも人の生活を育み続けてくれるであろう土壌の劣化や腐敗につながる恐れもありそうですしね。


つまり、人間の健康害というミクロな視点からだけで「硝酸塩は全く問題のないもの」というような論調になっているような所が少し気になってしまったという話ですね。



農学博士の西尾道徳先生は


野菜の硝酸濃度については,これまでいわれているほど,メトヘモグロビン血症や発ガンリスクを心配する必要はないと考えられる。ただし,窒素多量施肥は,環境への窒素汚染を増やして,表流水の富栄養化を起こし,アオコを繁殖させる。また,その他のルートを経て窒素酸化物やアンモニアが大気に気散して大気汚染も起こす。さらに,窒素を多量に吸収した野菜は抗酸化物質などの含量を減らして,機能性成分の少ない野菜を生産することになる(環境保全型農業レポート「No.296 有機栽培作物で高い抗酸化物質濃度は窒素多用で減少しやすい」)。


とおっしゃっていますが、「硝酸態窒素の本当の危険性や害の可能性」って、このような文脈からも語られるべきものだと思っています。



自分が農業で生活していることもあるのでしょうが、「多くの側面で、窒素の過剰施用に良いことはなく,適切な施肥を励行すべきである。」ということが、農業のスタンダードな価値観になって欲しいという願いがあるからなのかもしれません。



ここで本の内容の細かいことは書きませんので、ご興味ある方は是非読んでみていただければと思いますが、一言で内容を表すのであれば、多くの人が語り、問題視している「人間の健康被害の硝酸塩危険説」に対する疑問に真正面から答えてくれている本です。また、健康危険説は遺憾で、高くついた誤解だということも示しています。


どんな問題にも、矛盾やバイアスのようなものは一定数でてきてしまうと思いますし、その結果、人間社会の同調圧力のようなものも多かれ少なかれ自然発生してしまうものだとは思いますので、謎の理屈や常識みたいなものが次々に生まれてしまうことは仕方がないことだとは思いますが、だからこそ、どんな問題と接する時も「それって実際の所どうなのよ??」って視点は常に持っておきたいものだなと思います。


自分の信じているルールが覆ることも往々にしてあるでしょうし、社会の常識やルールなんて常に変わりゆくものですし、先人が作り上げてきた普遍のルールみたいなものが必ずしもあらゆる時代にマッチするわけでもありませんしね。


それは、この本で書かれているような分野のことだけでなく、今のコロナ問題もそうですが、多くの場面で当てはまることでしょうね。



最後に、本のリンクを貼っておきます。ご興味あれば是非読んでみてください。(記事内で紹介した西尾さんの本のリンクも貼っておきます。)







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