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炭素の土壌蓄積は温暖化防止にならない??



写真は、約10年前の西尾道徳さんの環境保全型農業レポートからのものですが、今だからこそ抑えておきたいとても大切なことが書いてあるように思います。


有機物が畑に蓄積し続けても、長期的な土壌炭素貯留には効果がないということです。


このレポートを読んで「すきこまない場合だったらどうなのだろうか??」「耕さない場合だったらどうのだろう??」というような考えが頭に浮かびましたが、不耕起栽培の場合においても炭素蓄積の効果が永続しないことは同様であることが、文中リンクの農水省の報告書に書いてありました。(以下『』内引用)




『不耕起栽培は、雑草の繁茂による除草労力や除草コストの増大、湿害の発生、粘 土質土壌における土壌孔隙率の低下等土壌物理性の悪化、水田における漏水等のデ メリットがあることから、我が国では、水稲、麦、大豆で不耕起栽培の実績はある ものの、総じて普及率は低く、普及面積の大きい麦であっても、その普及割合は1% 程度に過ぎない。
なお、近年、不耕起栽培に係る試験研究等が進み、一定の土壌条件、気象条件等 の下では、慣行栽培と同程度の収量水準が確保されるようになっているが、出芽・ 苗立の不安定性、地域の気象や土壌条件に合わせて、きめ細かな水管理や雑草防除 が必要となることから、現場への普及が進まない実態にある。こうした中、特に不 耕起栽培の中でも除草労力や除草コストの増大、湿害の発生等のデメリットがより 小さいと見込まれる省耕起栽培を中心とした普及について検討が必要である。
また、不耕起栽培によって表層土壌への土壌有機物の蓄積が増加するが、長期的 にはやがて年間に施用した炭素や窒素と同量の炭素や窒素が無機化される平衡状 態に達する。したがって、不耕起栽培は、短期的には炭素の土壌への蓄積を増加さ せるが、その蓄積効果は無限に持続するものではないことに留意する必要がある。』

と書いてあります。


また、同報告書内には、英国のローザムステッド研究所(旧ローザムステッ ド農業試験場)における 150 年を超える有機物連用試験のデータや、日本での約20年の堆肥連用試験のデータが図解されており、「有機物の投入が長期的な炭素蓄積にはつながらない」ということを示す裏付けとなっています。


「なるほど、そうなのか~」と思う一方で、「長期的には平衡状態に達する、という部分の理屈がいまいちよく分からない」とも思っていて、しっかり納得できていない自分がいます。


もう少し調べてみたり考えてみたり、人に聞いてみたりしながら解像度を上げていきたいと思います。



ここまで、注意点ばかりにフォーカスしているので一応言っておくと、僕はここで有機農業や不耕起栽培は環境貢献に効果がないということを伝えたい訳ではありません。


これらの農業技術が、適地においては土壌の物理性の改善に高い効果を示すとともに、土壌への炭素の貯留、生物多様性の保全等にも高い効果を有するこということは明白であり、そのことは同報告書内にも書かれています。


利点をより活かしながら、前に進んでいくための最適なルートを考えるためには、注意点の方にこそフォーカスした方がよいと考えていることから、僕はこういうことを積極的に取り上げたいと思いますし、このような情報をきっかけに、人と議論したりコミュニケーションしていけたら幸いだと思っています。


(僕自身がメリットを強く感じているプレイヤーなのにも関わらず、否定的だと勘違いされることがあるんですよね最近……(笑))


また、これは、長期的な土壌炭素蓄積量という視点で見た時の話であり、化学肥料を減らす為の技術として見た場合、その評価は全く違ったものになると思います。そういった、視点によっての違いを考えることは忘れないようにしたいと思います。


冒頭で述べた通り、ここで取り上げているのは10年前の記事やデータになりますが、僕が農業を始めた時の話であることを考えると、情報取得における自分の視野の狭さと偏りを実感します。


もっと洞察力を高めたいという欲求がわき上がります。

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■人の力と少しの道具で成り立つ、シンプル&ミニマムな農業をモットーに、農園を営んでおります。

当Blogの主な内容は、「久保寺農園の少量多品目野菜栽培記」や「生業としての不耕起、浅耕起型農業の実践記 & その栽培方法と考え方」になります。
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