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「草を肥料にして作物を育てる」ことに対し、メリットだけにフォーカスしないほうがよい。



「草を肥料にして農作物を育てる」という人に出会う機会がここ数年で随分と増えた実感があります。


出会う人の中にもそれぞれの文脈があって、緑肥型農業、原点回帰派、自然愛好家、社会活動家、単なる興味、色々な人がいます。


自然農や菌ちゃん農法のような手法に強く影響を受けている人も多く、「草を使えば肥料不要」のような考えを聞くことも増えました。


個人的には、「身近で手に入れやすい草資源を使って畑を管理したい!!」という熱を持っている人に共感することは多いので、お話を聞いていて「良いな」と思うことも多いです。


ただ、注意したいのが、ただ草を入れたからといって肥料が不要になる訳でも健康な作物ができる訳でもありません。

(草を入れることだけが目的化されすぎていることがある。)


また、「お金や労力もかからずに楽ちん」とか「無農薬栽培がやりやすくなるから」というような感じで、身近にある草を集めて田畑に投入することの有用性を語る人がいますが、経験上、それはそんなに簡単な話ではないように思います。


楽ちんどころかむしろ大変です(笑)


そもそも、作物を安定して健康に育て続けられるような養分確保を前提とし、それ相応の草資源を投入することはかなりの労力や時間が必要です。


機械を使って緑肥をすき込むならまだしも、「機械も使用せずに、身近な草資源をかき集めて人力で田畑に投入」なんていう行為を前提として作物を育てるなんて.....。


1反に満たない面積だったとしても、私はやりたくありません。


ただ、私自身「草をできる限りうまく農業利用できたらいいな」と考えながら農業をしている所があるので、草利用型畑仕事の前向きな可能性が、色々な所で追求されていること自体は、とても好意的に見ています。


ところで、古代から近世に至るまで、日本は草資源をかなり活用して農業を行ってきたという歴史があります。


水田面積が急増した江戸時代中期になると、水や草資源をめぐる争奪戦が勃発しています。

これは、水論、山論などとも言われています。


また、緑地雑草科学研究会所の資料によると、列島 100 万 ha の水田の周りには少なくとも 500 万 ha から 1000 万 ha 近い刈敷用の草を確保するための草地があったと書かれています。


すごい話です。


少ない土地面積で反収益を高めることが今の農業に求められることだと考えると、耕作面積の5〜10倍以上の面積を使って栽培に必要な資源を確保するような農業は、今の時代であれば、もはや農業の役割を果たさないでしょう。


しかし、農地を次の世代が農地として使い直せる可能性の拡大という意味で考えたら、草資源を確保するために管理する畑もセットで考えられた畑使用法に一考の価値もありそうに思います。

(一度荒れてしまった田畑を農地に戻すのは難しいですが、草管理を続けて山林化が止められている農地に関しては、また農地として使いたい時にすぐに活用できる)


「人口は減るし、山間農地の管理自体がかなり大変なのに、わざわざそんな手段を時代が選ばないか...」.と思いながらも、やり方によってはうまく機能させられる場所や手法があるかもしれませんので、このことについてはまだまだ色々な方向から考えてみたいと思っています。


※春菊も始まりました。

春の春菊は美味しいです。


つい最近まで、春に最も美味しいから春菊という名前がついたのだと思っていましたが、由来を調べてみたら「春に花が咲き、菊に似るがゆえ」とのことでした。


どストーレートで良いなと思いました(笑)




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■人の力と少しの道具で成り立つ、シンプル&ミニマムな農業をモットーに、農園を営んでおります。

当Blogの主な内容は、「久保寺農園の少量多品目野菜栽培記」や「生業としての不耕起、浅耕起型農業の実践記 & その栽培方法と考え方」になります。
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