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豊作貧乏と価格低迷


最近、担い手農家の経営課題(下図、日本公庫調査)を見て、農産品の販売価格下落に影響を感じている農家が多いことがとても印象的でしたので、今日は豊作貧乏についての記事を書こうと思います。



市場価格や資源コスト、この辺りのことは個人個人でどうにかなるものでないから本当に難しいなと思います。



農産品の価格の課題は、社会的な資源ロス問題や、非循環的な環境サイクルに直結するような気がしますので、「こういう課題の根本原因は一体どうやったら潰せるものか??」と考えてしまいます。






そもそも農産物の価格が下がるのは、需給のバランスが供給側に傾いているからになります。


つまり、作物が作れすぎてしまっているということですね。






上図は、主要8品目の食品価格動向調査(野菜)です。(農林水産省、食品価格動向調査より)


平年比でみると、全体的に下がり気味であることがうかがえますね。



一時、「コロナ禍の外食産業の低迷が価格下落の原因の一部」と言われているような時期もありましたが、ここ数年、台風被害が少なかったり、暖冬気味だったり、農産品が潤沢な出回りになるような気候条件が続いていることから、上図のような価格推移になっているのだろうと思います。


つい最近の話だと、冬~早春の低温、干魃の影響もあって、全体的に価格が上がっていましたが、主産地などからの聞き取り調査の結果を見てみると、3月に入ってから天候が回復傾向にあり、収穫量が安定し始めているということと、今後も安定した出荷が見込まれる品目も多そうで、急高騰した価格もしばらくは落ち着きそうとの見通しです。


(玉ねぎはまだまだ高騰傾向が続く見通しのようです…)




■人の胃袋には限界があるので、人為的介入で市場価格を調整。

野菜は、いくら安く販売したからといって、需要が伸び続けるわけではありませんから、(人の胃袋には限界がある)供給過多になってしまうと、あれよあれよと価格が下落していきます。



一次産品である農作物は、収穫量自体を調整することが人間にはなかなか難しいので、あまりに採れすぎてしまった場合は、廃棄したり、出荷時期を調整したりして、市場価格の極端な下落を防ごうとする力が働きます。


農産品が採れすぎたことにより価格が低落し、農家の収入が減ることを豊作貧乏と言いますが、大根や白菜などが作れすぎて、価格調整のために畑で泣く泣く潰しているNewsなどを皆さんも見たことがあるのではないかと思います。



※主要六品目(キャベツ、白菜、レタス、大根、玉ねぎ、人参)に関しては、需給調整事業というものがあって、産地廃棄に対し、助成金が支払われているケースもあります。


産地廃棄以外にも、出荷の前倒し、後送り、加工用販売、フードバンクへの提供、冷蔵施設への一時保管などに対しても同様の助成が行われます。


僕は小規模農家で、大産地で大量に作るというような方法をとっていませんが、自分の作った農産品を自ら潰すという行為をしなければならないような状態になったとしたら、いくらお金をもらえたとしてもメンタル大分すり減ると思います。


実際にそのような事態を受け止めなければならなくなった農家の皆さんがどのような感情処理をしているのかは分かりませんが、僕だったら次作を作る気を無くしてしまいそうな気がします。




■収穫量と出荷量の差分




上図は、令和元年産の野菜作付面積、収穫量及び出荷量の動向です。(農林水産省、野菜、作況調査より)


図を見ていただくと分かる通り、毎年約200万tの野菜が、規格外だからという理由や、価格の調整のために出荷されずに廃棄に回っていると考えられます。もしかしたらそれ以外の理由もあるのかな??(ちなみに農家の自家消費は出荷量カウントです)



ここで、「これは食品ロス量を強烈に増加させているのでは??」と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、農産物廃棄は基本的に食品ロスにカウントされておらず、減耗量とされています。


圃場で潰された農産物の具体量については農水省の方でも資料がないらしいので、出荷されなかった農産品がどのように処理されているのかに関しての細かいシェアは未知数ではありますが、収穫してから出荷されなかったものの数量はざっくり分かってはいるということですね。

しかし、このデータは、全ての農家が調査の対象になっているわけではないでしょうから、細かく拾っていったら、もっと廃棄量は増えるのだろうと思います。




「有機農家だけでデータをとったらどんな感じになるだろ?」ということに興味を覚えますが、そのデータを取ることはなかなか容易ではなさそうですね。



一見、ロス量は相当に多そうな気もしますが、逆に、状況を理解してくださる方が多く、一般的には規格外になるようなもののやりとりも多かったりすることから、ロスが全然少なかったりして。 そうだったら良いな。と思いますし、もしそうだったとしたら、そこにより良い未来のヒントがあるような気もします。


上記のロスは、食品ロス自体にはカウントされていないものの、肥料、エネルギーが高騰している昨今、「農地に投入した資源をどれだけ人類が食料として受けとることができるのか??」を考えることはとても重要なような気がしますので、収穫物がなるべく人の胃袋にロスなく入ると良いなと願うばかりです。



「じゃあ安く買うよ」、と言う消費者側の気持ちに対して、応えられる農家がたくさんいればいいのか? という話かと言うと、そこにも生産者余剰と消費者余剰の問題が潜むわけなので、なんとも難しい所ですが、そのあたりのことはまた次回に書こうと思います。


一体何のための規格なのか??、食料生産の最適化とは??、など、色々と考えさせられています。



僕個人の感覚のお話しではありますが、美味しいものをお腹いっぱい食べるということだけで考えれば、規格や多少の汚れや、虫食いなんて、そこまで大した問題にならないと思うんですよね〜。




それでは、続きはまた次回。




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